かけらブログ

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『劇場版 光のお父さん』の感想

ファイナルファンタジー14プレイヤーとして、また原作であるブログおよびドラマ版光のお父さんのファンとして、劇場版 光のお父さんを6/21公開日に見てきたのでその感想を書く。
正直なところ、個人的にはドラマ版の方が好きだったので、感想としてもドラマを上げて劇場版を下げるものになる。
劇場版のネタバレがあるので未視聴のうちに読むことは当然勧めないし、劇場版を楽しめた人は気分を害するだろうから読むのも勧めない。

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先に劇場版の感想をぶっちゃけてしまうと、SNSで言われる「泣けた」「良かった」というものは持てなかった。
劇場版を見て、ドラマ版ほど盛り上がるものがなかったのはなぜか、と言うことから書いていこうと思う。
なお、劇場版を見た後でドラマ版を見ながら比較して書いている。

アキオの心情がわからない

ドラマ版はアキオのモノローグが多く、14内や会社それぞれで心情の説明があり、父親のことがわからない息子の想いがよくわかる。
ゲーム好きの青年であることと、そうなった原点は父親と一緒にやったゲーム経験であろうことも見て取れる。
一方で劇場版は、普通にゲームをやっている青年としかアキオの人物が見えてこない。
好きなゲームを一緒にやる、というところへの欲求というか描写が薄い。
ゲームやってる時に隣にいてくれと請われて、ゲーム中のフレンドに聞いたらと勧めることもしない。
会社の先輩を通して、父親の考えがわからない事に気づくのは劇場版でも共通だが、その描写のボリュームが少ない。
お父さんが仕事人間で、ある時から自分との交流が無くなった描写もドラマ版ではより明らかに描かれている。
ドラマ版では光のお父さん計画を実行する明らかなモチベーションが分かる。
父と息子がゲームを通じてコミュニケーションをする事が個人的に1番この作品で刺さるシーンであるので、そこが薄くなったのが残念だった。

妹は不要だった

劇場版ではアキオの妹が設定された。
ドラマ版ではアキオとお父さんの二人とも他方への働きかけが多いが、どちらかが動かないと隔絶は埋まらないので当然である。
しかし劇場版では妹にコミュニケーションを任せっきりで、アキオもお父さんも動かない。
例えばドラマ版ではPS4の設置はアキオがやるが、劇場版はプレゼントとして買ってきたとは言うもののPS4設置はお父さんがやるまで放置だし、お父さんがゲームを始めようとしている事を寝坊するアキオに伝えに来たのは妹だったりする。
また、お父さん側の説明すら妹がやってしまうので、初心者のお父さんがエモート連打出来るのも唐突だった。
ドラマ版はアキオとお父さんのどちらかが動くしかなかったため、互いの心情が少しずつだがダイレクトに分かる状況があったし、そこが良かった。
妹はコミュニケーションの部分を奪ってしまったとすら言えるし、その立ち位置で動かすべきではなかったと思う。
お父さんの家族への想いを語らせるシーンのために設定したのだと思うが、それならそれだけに専念してほしかった。

ゲームとリアルの関係が希薄

ゲーム初心者のお父さんを助けることで、アキオも成長する描写はドラマ版の基本構造と言ってもいい。
それは少年期のお父さんとのやり取りを改めて認識する側面もあり、お父さんの心情が間接的に描かれているとも言える。
劇場版ではお父さんの引率からアキオ自身が得られるものは無くなっており、代わりに仕事の悩みを相談する形になった。
これは実際のところ、ドラマと映画というそれぞれのコンテンツで描きやすいものを選択した結果であるのだと思われる。
どちらが好きかというとドラマの方が好き、という個人的な趣味である。

病気の描写が唐突で軽薄

お父さんが会社をやめる原因の病気はドラマだとそれとなく匂わせる形で早くから出ている。
先輩の父親の話もあって、視聴者側はお父さんの思いを知る事にアキオ以上に急くものがある。
しかし劇場版はゲームをしていたらいきなり倒れて入院になった(としか見えなかった)。
しかも劇場版は倒れるような病状なのに病院を抜け出してネカフェに潜り込み、アキオはアキオで現実の父の居所を知らないままゲーム内で合流してツインタニア討伐を開始する。
とんでもないゲーム狂いの親子としか見ることができないこの演出は、パンフにあった『普通の人がネトゲをやっている』事を描くという狙いと真逆じゃないのか。
手術の成否が怪しいような演出があったけどドラマの結果を知る知らないに関わらずその先が冷めた目でしか見れなかった。

まとめ

TVドラマと映画はもちろん作り方が違うだろうから、単純に比較する事はできないのかもしれない。
劇場版の尺は114分で、一方ドラマ版は1回24分とすると7本で168分となり、単純計算で54分短い。
ただ、その差54分のストーリーを圧縮して劇場版を描けなかったかというと、それは違うと思う。
序盤のブルートジャスティスとか、海外で女買ってバレたとかの演出が必要だったか? タイタンやツインタニアの戦闘シーンが長かったけど必要十分だったか? というところだ。

結論として、ドラマ版のファンとしては、ドラマ版を期待して劇場版を見るべきではなかったと思う。